鑑賞することの大切さ

書道を始めたら、書道展にでかけましょう!

 

というと、『見にいってもわからないから……』という答えが返ってくることが多いです。

奎星会の創始者、上田桑鳩先生はこう書いておられます。

美術が『わかる』とか『わからない』とかいうことを一般に言いますが、純粋に言いますと、そのような『わかる』『わからない』というような知的な立場から論ずるものではなく、これは感じるものですから、感じを受け取るようにし、その感じが良いか、または良くないか、そしてよかったらそのよさが心に深く染み込んでくるとか、強く打って迫ってくるとかを論ずべき性質のものだと思うのです。そして深く感じることができたとき、それを『わかった』という言葉であらわしているのだと思っていますがどうでしょう。(上田桑鳩「書道鑑賞入門」より)

 

作品を見ることと書くことは同じぐらい大切です。見たことがないものを書くことなんてできません。書くためには、脳内に作品のイメージを思い浮かべる必要があります。

そのためにはそもそもどういったジャンルの書道作品があるのか、作品サイズの体感(大きいものは数メートルもあります)、紙や墨の質感、絶妙な墨色、筆使い、すべては本物をみなければ学べません。そしてなにより実物は書き手のエネルギーや息づかいがひしひしと伝わってくるのです。そんな素晴らしい作品が整然と並んだギャラリーは凛とした静寂の中にもエネルギーに満ち溢れていて、観ていると書きたくてたまらなくなり、また何度でも足を運んで観たくなります。

 

書道展の種類は、大きく分けて

古典の国宝や重要文化財などがみれるもの(おもに東京国立博物館、台東区立書道博物館や、五島美術館、出光美術館など)と、

現代書道家の作品が陳列された個展、グループ展、会派ごとの社中展、会派を超えた公募展(毎日展、日展等)など。個展、グループ展は銀座鳩居堂をはじめとする銀座界隈の画廊、和光、セントラルミュージアム銀座など。大型の社中展や公募展は新国立博物館、東京都美術館が主です。

 

そして、ほとんどの大型展覧会で開催されるのが、

  • ギャラリートーク 作品を前に諸先生方の批評や制作秘話などとても興味深いお話がきけます
  • 席上揮毫  実際に諸先生方の揮毫を拝見できます。筆や墨、何を使われているのか、どのように書かれているのか、とても参考になります。
  • ワークショップ  様々な体験教室。子どもが参加できることも多いです。
様々な趣向をこらした展覧会があちらこちらで開催されています。ほとんどは入場料も無料だったり……東京に住んでいて書道を学んでいるのに観に行かないなんて本当にもったいないことです。
初めは億劫かもしれません。いつしか楽しみに変わっていることと思います。
 
そして、書道展にたどりついたあなたは、作品を読もうとしないこと。作品を前にして読むことは忘れてください。
書道は、文字や文章の意味内容を書の形や筆勢で表そうとしているのではなく、感情や生命力を書き表わしているのです。読めなければ不都合なものではないのです。
作品の前に立ち、目を開き感じてください。何秒、何分、その作品と対峙する時間は人それぞれです。中には目に入ってもあなたの足が止まらないような作品があるかもしれません。それでいいのです。
私がもう何年も前に展覧会で頂いた北岡瑞桐先生の鑑賞の手引きを添付しておきますのでご覧ください。私のお伝えしたいことが全て書かれています。
私の教室で、大人の皆さんが取り組んでいるのは書道です。美文字でもなければ習字でもなく書写でもありません。
つまらない話ですがこれが一番皆様と関係が深いことかもしれないので言っておきます。四段以上になると条幅が試験科目にでてきます。そのときにどれだけの引き出しがもてているのか、ということにつながります。
そのときになって「どうしよう、どうしよう」と書道展をみてまわっても遅いです。
私も初めのころは、「それでなくても忙しいのになんで展覧会に😩」と思いましたが、やはり我が師が出品されている書道展、伺わないのは失礼と思って足を運んで数年、そのうち自分が作品を書くようになりました。そのときすっと作品制作に入っていけたのも何年も観てきたからです。自分のやってみたい、書いてみたい作品をイメージする力は、鑑賞することで育まれます。
 
書道をやるなら書道展に出かけ、実際の作品を見てください。
11月の奎星展と7-8月の毎日展は必ずいってほしいです。
できれば1月の現代書展、2月にある現代女流展も行った方がいいと思います。
あとは銀座にいったら鳩居堂にお邪魔すること。粋をこらした素敵な書道展が毎週開催されています。たいてい無料で誰でも入れます。
あとは『これは見ておいたほうがいい!!』というものは私がお伝えします。
お出かけ気分でお子様と一緒にでもいってみてください。